【人物紹介】 宵(しょう):若くして成功を収めた、月菜に執着するヤンデレ気味な元婚約者。本作ではとうとう夫となって月菜への束縛を強めていく。 月菜(るな):宵の異常な執着に恐怖を感じながらも、宵のことが嫌いになれない。
◇◇◇
結婚式を終えた私たちは、宵が用意した豪s奢な邸宅で新しい生活を始めた。 広いリビングに最新設備のキッチン。いくつもある書斎や個室も、しかし結局ほとんど使われることがない。 なぜなら──
「……またなの?」
寝室のドアが開く音に振り向くと、宵が書斎から戻ってきたところだった。シャツのボタンをいくつか外しながら近づいてくる。 ベッドサイドに腰掛け、私の腰に腕を回す。
「仕事の区切りがついた。少し休憩させてくれ」
「……さっきも『休憩』したばかりでしょう?」
朝食後、リビングで新聞を読んでいたとき。昼過ぎに庭に出たとき。夕食を作るためにキッチンに立っていたとき……。 思い出しただけで、蜜がじゅわ♡と滲むのを感じた。 宵はスマホをサイドテーブルに置くと、私の耳朶に唇を寄せた。
「同じ屋根の下に月菜がいて我慢できるわけがないだろ?」
「そんなの──んんっ♡」
抗議の言葉は途中で飲み込まれる。大きな手がパジャマ越しに乳房を包み込み、乳首を捉える。 ぐりっ♡くにっ♡と服越しに押し込まれると、硬くなった芯が服地に擦れてしまう。
「やっ……!あぁっ♡そこ……っ♡」
「どうしてほしいんだ?言ってみろ」
指先がピンッ♡と乳首を弾く。パジャマの布地が突起した先端を擦ってこそばゆいのに鋭い快感が走る。
「やだぁ……っ♡そんなこと言わせないで!」
「なら強制的に聞くしかないな」
宵は立ち上がり、ベルトを緩めながら私をベッドの中央へ押し倒した。宵は、私の首筋や肩に散らばった髪を、愛おしそうにひと束掬い上げる。その指先が地肌をかすめるたびに、抗えない熱が背筋を駆け抜けた。 私を見下ろす瞳は……どこまでも深い闇。
宵は私をうつ伏せに寝かせると、下着をずらして剥き出しになった尻を高く持ち上げた。背後でチャックが下りる音がした。
「いや……まだ準備が……ふ、ぁ゛っ!?♡」
熱く濡れた塊が谷間を滑り降りてくる。ローションを使われていないのに驚くほど滑らかに──理由は明白だ。私が期待しているせいで既に蜜が溢れてしまっている。
「こんなに濡れてるのに準備が必要か?」
「ちがっ……それは宵がいつも──ひ、ぁ゛ぁっ♡♡」
反論の途中で宵の舌が首筋を舐め上げる。ぞくぞくっ♡と寒気が駆け抜けた瞬間、硬い切っ先が蜜口を探り当てた。 そして……ゆっくりと沈められる。
ぬちゅうううぅ~~~♡♡♡
「あ゛……♡っっふ……っ♡」
奥まで到達する過程でGスポットを擦られ、無意識に腰が浮いてしまう。宵は低く笑いながら私の腰を掴み、楔を打ち付け始めた。
パンッ♡パンッ♡パンッ♡パンッ♡
宵が私の背中に覆いかぶさるように体重をかけた途端、逃げ場がないことが本能的に理解できた。太腿に宵の内股がぴたりと密着し、腰がぐっと押し付けられる。結合部分が深まる。
「あ゛っ♡ふかっ……ぃ♡」
子宮口まで届くほどの突き上げに喉が反る。逃げようと足掻けば逃げるほど、宵の剛直が深く食い込むだけだった。背後から低い笑い声が落ちる。
「逃げられないぞ」
ずちゅっ♡ずちゅっ♡ずちゅっ♡ずちゅっ♡ ずぷっ♡じゅぶっ♡じゅぽっ♡じゅぷっ♡
宵の抽送が加速する。引き抜かれるたびにカリが膣壁を削り取り、再び突き込まれるごとに子宮口をノックする。その一往復のたびに背骨が甘く痺れ、脳天まで衝撃が突き抜けた。
「あ゛、ぁ゛ぁ゛ッ♡……まって……っ……まッてぇぇ゛ぇッ!!♡♡」
必死に懇願しても腰の動きは止まらない。それどころか、私の腰を押さえつける宵の手の力が強まった。完全に固定された身体が無防備にさらされる。
ぐちゅ♡ぬちゅ♡ごりゅ♡ごりゅ♡
剛直の先端が執拗にGスポットを抉る。粘膜同士が擦れ合う湿った音が部屋に響く。
「ひぃぃィっ♡♡……そ、こぉッ……ばッかりぃぃい゛ィッ……!!♡♡」
「ならこっちはどうだ?」
宵の囁きと共に角度を変えた猛りが一気に最奥を叩く。
どちゅっ!!!♡♡♡
衝撃で視界が真っ白になる。呼吸が止まった瞬間、宵の腰使いがさらに激しさを増した。
ばちゅっ!ばちゅっ!ばちゅっ!ばちゅっ
叩きつけるような律動が容赦なく続く。シーツを握りしめる指先が白くなるほど力を込めた。
「ふぅぅぁッ♡……イッちゃうぅッ♡……あ゛、ぁ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!♡♡♡」
視界が一瞬白く弾けた。膣がきゅううぅ~♡と収縮し、宵のモノをきつく締め付けてしまう。 それでも──宵は動きを止めない。
どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡
「あ゛ッ!?♡……やだぁッ♡……い、まっ……イッてる、からぁ゛っ!!……とめてぇ……ぇ゛ぇッッ♡♡」
懇願の声は届かない。むしろ宵の吐息が荒くなり、抽送のペースが上がる。絶頂中の敏感な膣壁を容赦なく擦られ、私は枕に顔を埋めて泣き叫んだ。
「おねが……ぃ……っ、ほんと、にっ……こわれちゃうぅ……っ♡……また、イッちゃうよぉぉ゛ッ♡」
「壊れても一生面倒見るから。安心してイケ」
「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!!♡♡」
再び快感の大波が襲いかかる。どちゅんッ♡と最も深い位置で肉塊が震え、熱い飛沫が子宮口を叩いた。
「ぁ、あ゛ぁッ……!……なか……ぁ、ついの……ぉぉ……っ♡」
ドクドクと注ぎ込まれる感覚に浸りながらも、まだ宵のモノは硬さを失っていない。 ずるり……と引き抜かれるときに掻き出された白濁液がシーツに垂れた。
休みなく仰向けに押し倒された私は息も絶え絶えだ。しかしそれだけでは終わらない。 宵は私の足首を掴むと、M字に大きく開かせた。秘部が丸見えになる恥ずかしい格好。濡れそぼった陰唇の奥で、小さく充血した芽がぴんと勃起していた。 そのときだった。宵の視線が私の股間へと注がれる。花弁を更に開かれると、内側からどろりと粘ついた液体が垂れ落ちてきた。透明な愛液に混じって白濁したものが──先程中出しされた精液だった。
「あ……っ……ゃあぁ……っ♡」
「いつ見てもそそる光景だ……」
宵の目が妖しく輝いた。指で精液と愛液の混合物を掬い上げると、それを私のクリトリスに塗りつける。
「ほら……こっちにも俺の種が沁みていくぞ」
粘ついた液体が敏感な突起を覆い、冷たい感触と熱い感覚が同時に襲いかかる。
「ひぃッ♡……だ、めぇ……っ、そん、な……っ、ぁ、ぁぁ……っ♡」
「俺のもので染めてやる…」
執拗に塗り込む動きに合わせて腰が震えてしまう。その間もどろどろと白濁した液体が流れ落ち、シーツに染みを作っていく。
宵は私の反応に気を良くしたのか、今度は舌先を伸ばして触れてきた。
ぺろ……ちゅぱっ♡
「ひいィッ♡……やだ、やだぁ……っ♡……くすぐッたい、からぁ……っ♡♡♡」
「素直じゃないな、こうしていじめられるのが好きなくせに……」
執拗に舌が絡みつく。舐め上げるたびに蜜が溢れ、宵の舌を潤していく。 ちゅううぅ~~っ♡と吸引されると背筋が痺れ、お腹の奥がきゅんっ♡と疼いた。
「ん、ぁ、ぁぁ……っ♡……すうのぉ……やめ、てぇ……っ、ふぅ……♡♡♡」
宵は歯で軽く挟んでから解放し、再び舌先で丸く円を描くように舐め回す。 敏感すぎる器官を容赦なく責められて、蜜壺からはとめどなく愛液が溢れ出した。
「すごいな……どんどん溢れてくる」
「いわ、ない、でぇぇ……っ♡」
宵は両手で花弁を固定し、真空状態を作るように激しく吸引した。 じゅるじゅる♡という卑猥な音とともに快感の波が押し寄せる。
「ひゃあ゛ぁ゛あ゛ッ!?♡……そ、れっ、おかしく……なッちゃう、からぁ゛ぁッ……!!♡♡」
腰ががくがくと震え始め、目の前がちかちかと眩む。 舌が離れると今度は二本の指で摘まれた。コリコリ♡と指先で捏ねられ、更に敏感になったところを宵の吐息が撫でる。
「ぁ、あッ♡……あ゛、ぁ゛ぁッ♡……また……イキそ……っ!ぅぅ……っ♡」
快感の閾値を超えそうになるたびに宵はわざと中断し、焦らしに焦らす。 足の先まで力が入り、シーツを握りしめた拳が白くなる。 そして再び口が近づいてきた瞬間──
「イッ……クぅぅッ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!♡♡♡」
ぷしっ♡♡♡
潮が勢いよく噴き出し、宵の顔を直撃した。 宵は唇についた水分をぺろりと舐め取り、恍惚とした表情で微笑んだ。
「イヤだのダメだのいいながらずいぶん感じてるじゃないか」
羞恥に身を捩る私を気にもせず、宵はそのまま膣内に指を押し込む。 ぐちゅぐちゅ♡と掻き回しながら親指でクリトリスをこねる。内外からの激しい刺激に私はもはや言葉を失った。
「ん゛ぅ、ぅぅッ♡……あ゛ぁ゛、ぁ……っ、もぉ……むりぃ……っ♡」
「まだまだだ」
指を引き抜いた宵は再び自身の剛直を掴み、今度は正常位で挿入する。
どちゅんッッ!!♡♡♡
「ひいィッ!?♡……あ゛、ぁ゛ぁ゛ッ♡……またぁぁあ゛ッッ!!♡♡」
どちゅッ♡どちゅッ♡どちゅッ♡どちゅッ♡どちゅッ♡
膣壁を刮ぎ取るような激しい抽送。敏感になったクリトリスが宵の下腹部に擦れて快感が二重に襲ってくる。
「ひぁぁぁッ♡……ほんとぉに……むりぃ゛ぃッ……っ♡」
懇願の声は宵の唇に封じられ、舌を絡め取られる。唾液を飲まされながら膣奥を執拗に殴られ続ける。
互いの舌が絡む湿った音が室内に響く。ぴちゃっ♡ぴちゃっ♡という水音と同時に、宵の太い腕が私の肩をがっちり押さえつけて逃げ場を奪った。唇同士が溶け合うように密着し、荒い息遣いが鼻腔を満たす。舌先が上顎をなぞり上げるたび背筋がゾワゾワする。
(ダメ……頭がぼーっとする)
意識が朦朧とする中で下半身からも凄まじい快感が押し寄せた。宵の腰使いが変わって最深部だけを集中攻撃するパターンになっている。亀頭で子宮口をノックされるたびに目の前が白黒に点滅した。
どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡
「ん゛、ん、ふぅぅ……ッ♡……ん、んっ♡……ん゛、ん゛ん゛ん゛ーーッ♡」
くぐもった声が漏れてもすぐに宵の舌に絡め取られる。キスしながらの突き上げに思考が霞んでいく。膣壁が勝手に収縮し、宵の猛々しい剛直を締め付けるのが自分でもわかる。
舌同士を擦り合わせながらも抽送は一切緩まない。むしろキスの密度が上がるたび腰使いも激しさを増していく。
「ん゛ん、ぅっ♡……ん゛ッ、ん、ぅ♡……ん゛、ふぅぅぅ……♡」
酸素不足で脳がクラクラする。その間も宵の肉棒が子宮口を穿つ衝撃が続く。パンッパンッ♡と肌がぶつかる音に混じって淫らな水音ぐちゃぐちゃと響く。
唇が離れた僅かな隙間から悲鳴が零れた。
「や゛ぁ゛あ゛ァァッ♡……お゛くぅ゛……ッ、ひぅぅ゛ぅ~~ッッ!!♡♡」
すぐに宵の唇が追いかけてきて言葉を飲み込む。代わりに舌が捻じ込まれ口内を蹂躙される。唾液が溢れ二人の混ざり合ったそれを喉奥まで流し込まれた。
どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡どぢゅんッッ!!♡♡♡
「ん゛、ん゛ッ、ん゛ん゛ぅ、ぅぅ~~~ッッ!!!♡♡♡」
膣奥で何かが破裂しそうな予感。子宮口を抉られるたび全身の神経が逆立ち汗が吹き出す。指先まで痺れて動かせないのに下半身だけ別の生き物みたいに震える。
キスで封じられたまま限界を超えた瞬間が訪れた。
「ん、ぅぅッ♡……ん゛、ん゛~~ッ♡、ん゛、ん゛ん゛ん゛、ん゛ん゛ん゛ーーーッ!!!♡♡♡」
声にならない叫びと共に絶頂の波が押し寄せる。膣全体が狂ったように収縮し宵のものを締め上げる。その直後――
どびゅるるるッッ!!♡♡♡
熱い濁流が子宮を叩く。宵の精液がドクンドクンと脈打ちながら注がれる感覚に酔いしれる。同時に最後の理性が飛んだ。
「ん゛あ゛ぁっ♡ん゛っ♡ん゛むぅぅ〜〜♡♡」
しかし宵の瞳には飢餓感が宿ったままだった。萎えかけていたはずの肉棒が再び硬度を取り戻していることに気づいてしまいゾッとする。
「ぷはぁ……っ、ま……っだ……?♡」
震える声で尋ねると宵は微かに笑みを浮かべた。
「もちろんだ。月菜もわかってるだろ」
この宣告に血の気が引く思いだったが、逃げる術はない。
宵は私を横向きに転がし、深く挿入する。片足を持ち上げられることで結合部が丸見えになり、白濁液が溢れ出す様子さえ見える。 どぢゅっ♡どぢゅっ♡と音を立てながら腰を打ちつけられ、私は泣き叫ぶ。
「いやあ゛ぁ゛ぁッ♡……ほんとに、も、ぉ……むりぃ゛ィぃ~~ッッ!!♡♡」
「フッ、そんなこと言ってられなくなるまで続けてやる」
どぢゅどぢゅどぢゅッ♡どぢゅどぢゅどぢゅッ♡
宵の猛追は止まらない。獣の咆哮のような荒い息遣いと肉同士がぶつかる音だけが部屋中に響く。 私は涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫び続けるしかなかった。
宣言通りの責め苦は深夜まで続いた。最初は悲鳴だったものが、いつしか嬌声に変わり──最後には宵の腰に脚を絡めて「もっと」と繰り返す自分がいた……。
◇◇◇
結婚してこの邸宅に来てから、私はほとんどの時間、寝室で過ごしている気がする。いや、正確には宵に抱かれ続けているせいで、動けずに寝室にいる時間が異常に長いのだ。 この生活はあまりにも不健全すぎる。太陽がどの角度にあるのか、今日は何曜日なのか、宵に愛されること以外の一切の感覚が麻痺しそうになる。
重い体をなんとか引きずり、せめて気分を変えようと、広い家の中を歩き回った。 導かれるようにたどり着いたのは、物置になっているロフトだった。 この家に来てから、こんな隅の部屋に足を踏み入れることはめったになかった。古い木材の匂いと、ほこりっぽい微細な粒子が漂っている。
梯子を上り、ロフトに上がってみる。天井近くの小さな窓から斜めに日差しが差し込んできており、案外気持ちの良い空間だった。外の青々とした庭の木々が窓枠に切り取られて見える。私は窓際の床に座り込み、久しぶりにしっかりと外の光を浴びた。
そのとき、遠くから聞き慣れた車のエンジン音がした。
……宵だ。
私の意識は一瞬で緊張に包まれる。今日の帰宅は夕方だと言っていたはずなのに。忘れ物でもしたのか、それとも予定が変わったのか。 何にせよ、今このまま彼に見つかれば、問答無用でまたあの濃密な時間に戻されるのは目に見えている。無駄な抵抗とは頭では理解しているが……この静かな空間をもう少しだけ守りたかった。
音を立てないよう、そろそろとロフトの暗がりに身を潜める。 やがて、遠くの玄関が開く重い音。そして、低く甘い、しかし抗いようのない声が響いた。
「月菜ー?」
開口一番に私の名が呼ばれる。私は呼吸を止め、物音一つ立てないように耐えた。
「寝室か?」
足音がまず、私たちが頻繁に使う寝室の方へ向かう気配がした。 なんだか悪いことをしているみたいで心臓がドキドキと脈打つ。いっそ私が出かけたのだと勘違いして、そのまま仕事に戻って諦めてくれたらいいのに。 しかし、宵の執着はそんな甘いものではなかった。
「月菜〜、どこに行った?」
声がリビングを通り過ぎ、廊下を探索し始めたのがわかる。
「かくれんぼか?」
彼の声のトーンが変わり始める。ただ探している声から、獲物を見定めているような、妙な熱を帯びた声へ。
「相変わらずかわいいやつ……こんな風に俺を煽ってどうなるかわからないなんてな」
段々、宵の思考が不穏な方向に行っている気がして、背筋が凍る。しかも、足音は間違いなくこちらの方向へと近づいて来ていた。 もう出ていこうかと思った、まさにその瞬間。ロフトに繋がる部屋のドアがガチャリと開く音がした。
私は影の中で身を固くする。 もうここまできたら為す術はない。観念して待っていると、宵が梯子に手をかけ、軋む音とともに登って現れた。 ロフトの狭い空間に、スーツ姿の宵の大きな体が現れる。 窓から差し込む日光が彼の黒い髪を縁取り、その顔を半ば影に沈めているが、私を見つめる瞳だけは、とろけるように甘く、深い。
「……見つけた」
「……おかえり」
「ただいま」
そういう宵の表情は穏やかなようで熱がこもっている気がする。
「こんな所でどうした?」
「たまには気分を変えたかったの」
「そうか。たしかにここはあまり来ないよな」
「宵こそどうしたの?帰りは夕方と言ってたのに」
「ああ、先方の都合で1件予定がキャンセルになったから帰ってきた。」
彼は一歩踏み出し、私のすぐ目の前に立った。
「しかし月菜、お遊びもいいが少し心配したぞ。家にいるのはわかってたが、万一もあるからな。」
「なんでわかってたの?コンビニに行ったり、私だってちょっと出かけることもあるでしょ」
「……ああ、そうだな」
そう言った宵の瞳は、いつも以上に何かを含んでいて底知れないものがあった。もしかして……私、監視されてる? 想像でしかないが、あの執着心の強い宵ならやりそうでゾッとする。
考える間もなく、ロフトの硬い木製の床に倒された。背中に木の冷たさが伝わる。 やっぱりこうなるのね……。
「もう、こんな所で……」
身動ぎしようとするが、彼の力強い腕にガッチリと拘束されていて防がれてしまった。
「月菜も気分を変えたいんだろ?じゃあちょうどいい」
宵は囁くように言うと、私の耳の後ろに熱い吐息を吹きかけた。
「月菜を飽きさせないよう、俺も気を付けないと」
「飽きるどころか、もうお腹いっぱいよ……」
「可愛いな……月菜。『俺のものでお腹いっぱい』だなんて……」
「そういう意味じゃ……んっ!?……ふぅ……♡」
反論の言葉は、熱い唇で遮られた。 ねっとり絡んでくる、厚く長い舌。大きな体に押し潰されるみたいな格好になると、ロフトの狭い空間が更に狭く感じられ、身動きが全くできない。 物置小屋に差し込む午後の日差しの中で、二人を包むほこりの粒子が、きらきらと輝きながら舞い上がっていた。
「ん、んぅ……っ、ん、は……っ、んぅ……♡」
キスで言葉を封じられた私は、宵の胸板を弱々しく押すが、まるで鉄板のような硬さに阻まれる。私はまるで狩猟された小動物のように拘束されているしかない。
「月菜……俺から逃げようなんて思うなよ」
唇を離した宵は、低く甘い声で囁く。瞳は深い闇を湛えながらも、私を見つめる目元が柔らかく緩んでいる。咎めるというより、その行為が彼の執着心を一層掻き立てたようだ。
「そんなに退屈してるなら、いい考えがある」
そう言うと、宵は突然立ち上がりロフトの隅に向かった。埃を被った荷物の中から赤い綱を見つけ出す。山登りで使うような頑丈そうな縄だ。ほこりを払う手付きが妙にゆっくりで、これから起こることを予告しているように思えた。
「これでどうだ?」
「え?どういうこと……?」
「月菜が飽きないよう、今日は趣向を変えて楽しもう」
宵は冗談めかした口調で笑うが、その瞳は決して笑っていない。獲物を捕らえた猫のような楽しげな光が宿っている。
「ちょっと待って……」
制止の声も虚しく、宵は縄を手に私の前に膝をついた。スーツの袖をまくり上げた逞しい腕が月明かりに照らされている。大きな手が私の左手首を掴むと、もう一方の手が赤い縄をくるくると巻きつけ始めた。
「やめて……痛いのは嫌……!」
「大丈夫だ。痛くはしない」
言葉とは裏腹に宵の手つきは迷いがない。荒縄を手首にきっちり巻かれ、余った端が宵の腕へと伸びる。まるで鎖のように私たちは繋がれてしまった。
「どうだ?これなら月菜も逃げられないだろ?」
「だから逃げないってば……」
「だったら、これをつけても問題ないだろう」
宵は満足そうに微笑むと私の隣に座り込んだ。赤い縄が二人の間に一本の橋を作っている。彼が軽く手を引くと、ぎゅっという音と共に距離がさらに縮まる。お互いの体温が触れ合うほどの近さだ。
「月菜……これで俺たちは離れられない」
囁きながら宵は唇を近づけてきた。拒む暇もなく深いキスが始まる。舌が入り込んでくると同時に太腿に熱い手が触れた。
宵が片手で器用に私のワンピースの裾を捲り上げた。ショーツを無造作に引き下ろされ、晒された秘所がひんやりとした空気に震える。
「やっ!見ないで!」
羞恥に顔を覆いたくても縄が邪魔をする。手を動かすと縄が宵の腕を締めつけ、逆に彼を喜ばせる結果にしかならない。
「月菜のここ……もう濡れてる」
宵の指が割れ目をなぞるとくちゅ♡という音がロフトに響いた。指先でクリトリスを押しつぶすように擦りながら耳元で囁く。
「こんなことをされて感じてるのか?」
「ちがっ……んんっ!」
否定の言葉は指が二本入ってきた衝撃で途切れた。ぬぷっ♡ぬぷっ♡と水音を立てながら宵の節くれだった指が出入りする。Gスポットを狙うように指が曲げられると腰が跳ね上がった。
「あ、あ゛ぁッ!……そこぉッ……だ、めぇぇ……っ♡♡♡」
「ダメ?嘘はよくない……ほら、もっと溢れてきたぞ」
宵の指摘通り愛液が太腿まで垂れている。羞恥で顔が熱くなりながらも快楽に逆らえない。
「だってぇ……っ、宵が……ぁ、んっ、ん、ぅ……♡」
「俺が?何だって?」
意地悪く問い詰めながら指の動きを速める。ぐちゅぐちゅ♡といやらしい音が大きくなるにつれて私の呼吸も荒くなっていく。
「宵が……♡い、じわるっ、する、から……っ♡」
「じゃあ止めるか?」
指を引き抜かれそうになると反射的に宵の腕を縄ごと強く握ってしまった。
「やっ……やだぁ……ひぅ……やめ、ない、で……♡」
宵は嬉しそうに笑うと指の抽送を再開する。
「正直になって偉いな……ご褒美だ」
三本目の指が加わり膣内の圧迫感が増す。バラバラに動く指先が感じるポイントばかりを攻め立てる。
ぐちゅぐちゅ♡という淫靡な水音がロフトに響き渡る。縄で繋がれたまま離れることもできず、ただ宵の腕にしがみつくしかない。
「どうだ?逃げたことを反省したか?」
宵の声は低く甘いのに、指先は容赦なく私の弱点を責め立てる。Gスポットをえぐるように何度も往復すると腰が勝手に跳ねた。
「だからにげてな……やぁっ!そこ、ダメぇ……っ!」
必死に訴えても宵は笑うだけだ。
「ダメばかりだな。じゃあもっとダメにしてやろうか?」
指がV字に開かれ膣壁を拡張されると頭が真っ白になる。
「だ、めぇ……っ♡……ひ、ろ、げ……ない、でぇぇ……ッ♡♡♡」
涙目で懇願しても逆効果。宵はますます興奮した様子で指の動きを速めた。ぐちょぐちょ♡と愛液が泡立つほど激しく掻き回される。
「やっ!……や゛だぁッ♡……イッ、イッちゃう、からぁ゛ッ!!♡♡♡」
「いいぞ、ほらイケ」
親指でクリトリスを押しつぶされながら内部を擦られると全身が強張った。
「あ゛、あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーッッ!!!♡♡♡」
絶頂の波に飲み込まれる。縄がピンと張り、腕に食い込む痛みさえ快感に変わる。
しかし宵は手を止めない。震える内壁を確かめるように指を小刻みに揺らす。
「やめて……っ、いま、イッた……ばっかり……ぁあ゛ぁッ♡」
「一回だけで済むと思うか?」
クリトリスを執拗に捏ね回されると再び熱が湧き上がる。二度目の絶頂はすぐそこだった。
「あ゛、あ゛、ぁ゛ぁ゛ぁッ♡♡……だめぇ……っ♡……また、イクぅぅぅう゛ぅッ!!♡♡♡」
弓なりに反った背中が宵の胸板にぶつかる。 ベルトを外す金属音が聞こえた瞬間、恐怖と期待が入り混じる。彼のモノがゆっくりと露出する──血管が浮き出た凶悪なサイズの剛直。亀頭の先からは先走りが糸を引いている。
「今度は俺のコレでイかせてやる」
そう言いながら私の両脚を抱え上げた。濡れそぼった入口に熱い切っ先が宛がわれる。
「ま、って……まだ、ダメ……♡」
拒否の言葉は自分の耳にも虚しく響く。本当は早く欲しいと叫んでいるのに。
「待てない」
ぬぷっ♡という音と共に先端が侵入してきた。散々弄ばれたせいで簡単に飲み込んでしまう。
「あぁっ♡♡」
一気に根元まで埋め込まれると目の前がチカチカした。宵の形がハッキリ分かるくらい締めつけてしまう。
「くっ……月菜の中はいつ入っても最高だ」
宵も快感に眉を寄せる。 その表情に罪悪感と高揚感が同時に押し寄せた。
「動くぞ」
その宣言と同時に激しい抽送が始まった。 パンッパンッ♡と肌がぶつかる音。 子宮口を何度も殴られるような衝撃に、背筋が痺れる。
「や゛ぁ゛あ゛ぁ゛ッ♡……ふかいのぉ……だめぇ゛ぇ゛ぇッ!!♡♡♡」
涙と涎で顔がぐしゃぐしゃになる。 縄でつながれた腕を宵の首に回すとさらに密着度が増した。 突かれるたびにキスマークだらけの胸がぶつかり合う。
「月菜……もっと啼け」
宵の低い声が鼓膜を震わせる。 腰使いが激しさを増し、肉棒が膣壁を削るように出入りする。 特に奥を小刻みに擦り上げる動きが私の理性を焼いた。
「ひっ♡……んあ゛ぁ゛ぁッ♡♡……そこ、ばッかりぃい゛ィッ……!!♡♡♡」
弱い箇所をピンポイントで攻め続けられると、抵抗する意思すら溶けていくのを感じた。
「気持ちいいんだろう?」
「き、もち……っ、よく……なんかっ……ひぁ゛あ゛ぁッ♡♡」
嘘だと分かっていても口にしてしまう。 その度に宵の抽送が速くなる。
パンッパンッパンッパンッ♡♡
「嘘つきにはお仕置きしてやる」
太い指が結合部に伸び、クリトリスを摘み上げた。 既に肥大していたそこを上下左右に捻じられると、背中が弓なりに反る。
「や゛ぁ゛ぁ゛ッ♡……いっしょ、だめぇ……っ♡……こわれちゃうぅぅぅ゛ッ!!♡♡♡」
「壊れればいい」
蜜壺の収縮が止まらない。 宵の肉棒をきつく締め付けながらも、腰は勝手に擦り付けるように動いてしまう。
「月菜……お前は誰のものだ?言ってみろ」
言葉の間もクリトリスを嬲る手は止まらない。 親指と人差し指でつまんだまま高速で磨かれる。
「ひぃいィィッ♡♡……やだぁ゛あ゛ァッ♡♡」
「そうか、言えないならもっと苛めてやらないとな……」
肉棒が一層深く突き刺さる。 子宮口を突破しそうな勢いで押し上げられると、目の前が火花のように散った。
どちゅんっ♡どちゅんっ♡どちゅんっ♡♡♡
「あ゛、ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーッ♡♡……くるぅ……っ♡……イ、イッちゃうぅぅ゛ぅッ!!!♡♡♡」
どぴゅっ♡どぴゅっ♡どぴゅっ♡
熱い精液が子宮を満たす感覚と同時に潮が噴き出す。 それでも宵は律動を止めない。 むしろ精液で滑りやすくなった膣内を更に激しく蹂躙する。
「いやあ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁッ♡……もぉ……つかないでぇ、ぇ……ッ♡♡」
「……じゃあなんて言えばいい?」
次の快感波が押し寄せる中で、宵はクリトリスへの責めを再開した。 今度は周囲の皮膚ごと揉み込むように擦り立てる。
「ひい゛ィッ♡♡……それっ、おか、しく……なるぅぅ゛ぅーーッ!!♡♡」
理性の壁が粉々に砕け散る。 快楽と羞恥の狭間で、思考はもう纏まらない。
「早く言え……誰のものだって?」
「ん゛っ……っ……宵……のぉ……」
途切れ途切れの言葉を引き出すために、宵は腰をぐりぐりと押し付けた。 射精したばかりの肉棒が再び硬度を取り戻している。
「ほら、誰が誰のものだ?」
どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡
「宵のぉッ♡♡……わたしは……宵、の、ものぉぉッ♡♡♡」
やっと言葉が出た瞬間、宵の表情が僅かに緩んだ。 しかし責め手は止まらない。
「じゃあ、もう俺から逃げないか?」
Gスポットを的確に擦り上げながら確認される。膣壁がまた収縮を始めた。
「あ゛、あ゛ぁッ♡♡……もぉ……にげ、ないッ♡♡♡……宵、だけ、の……ものだからぁぁぁッ!!!♡♡♡♡」
「本当に?」
疑いの言葉と共に宵はクリトリスの根元を強めに絞った。 既に神経過敏になっている性感帯を直接虐められると、意識が飛びそうになる。
「ほんとにッ……もぉ、にげないぃッ♡♡……宵と、ずっと……いっしょに……いるぅ゛ぅぅッ!!♡♡」
涙と汗で顔をぐしゃぐしゃにしながら言ってしまった。理性は粉々に砕け、縄で繋がれた腕で宵の首にしがみつきながら、とうとう自ら腰を動かし始めてしまう。
「いい子だ……ご褒美をあげなきゃな」
宵は私の腰を掴むと、今まで以上に深く突き入れた。 子宮口を何度もノックしながら最奥を抉る。
「あ゛、ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーッ♡♡……おく、しゅごぉい゛ィッ……♡♡」
悦びの声が抑えきれない。 快楽が頂点に達する寸前で宵は動きを止めた。
「欲しいか?」
「ほ、し、いッ♡……宵がっ、ほしい゛ぃ……っ♡♡」
恥も外聞もなく懇願する私に宵は満足げに微笑む。 そして次の瞬間──。
どぢゅんッ♡どぢゅんッ♡どぢゅんッ♡どぢゅんッ!!!♡
一気にスパートをかける抽送が始まった。 膣壁が歓喜に震え宵の肉棒を締め上げる。
「イッ、イ、イクぅッ♡……ま、た、イッ、ちゃうぅぅう゛う゛ッ!!……♡♡」
「出すぞ……俺を全部受け止めろ……!」
どびゅるるるっ♡♡♡びゅくっ♡びゅくっ♡びゅくっ♡
熱い精液が子宮を満たす感覚と同時に私も絶頂を迎えた。 全身が痙攣し舌を突き出したまま悦楽に浸る。
「あぁぁ……♡宵のがいっぱいぃぃ♡♡」
射精が終わった後も宵はしばらく動かず繋がったままだった。 互いの荒い呼吸と心拍が交錯する中で、ゆっくりと瞼を開ける。
「月菜……月菜は俺のものだ、忘れるな」
そう囁きながら宵は私の額に優しくキスを落とした。 その声色には執着と愛が複雑に入り混じっている。
「うん……わかってる……」
私はかすれた声で応えながら宵の胸に顔を埋めた。 差し込む午後の日差しの中で、ほこりっぽい空気と性臭が混じり合い、木製のロフトは歪んだ日常を映し出す鏡のように私を見つめていた。
◇◇◇
翌日、久しぶりに実家から電話がかかってきた。リビングのソファに座り、ハーブティーを飲みながら受話器を握る。
電話口から聞こえる母の声は、いつも穏やかで、私を包み込むようだった。
「本当に良かったわね、月菜。あんなに良い人と結婚できて」
「うん……」
私の返事は、いつもより少しトーンが低かったかもしれない。母はすぐにそれに気づく。
「どうしたの?声に元気が無いわよ」
「宵は……たしかに愛してくれてるんだけど、息苦しく感じることもあるの」
両親に、「ほとんど一日中抱かれてる」なんて、さすがに言えない。言えるはずがない。 だから、言葉を慎重に選ぶ。
「愛が重いというか……私にべったりで」
その言葉を聞いた母は、電話の向こうで少し笑う気配がした。
「まあ、そんなに一途で熱烈に愛してくれるなんて」
むしろ母は好意的に受け止めてしまった。一般的な女性にとって、若くして成功を収め、他の異性に目もくれない夫は理想なのだろう。
隣にいるらしい父の声が聞こえて、低い声で言った。
「取引先に聞いたが、宵くんは相当にモテるらしいぞ。若くしてあれほど稼いでいるから、当然かもな」
「イケメンだしね」 相槌を打つ母の声。
「それでも、仕事関係の付き合い以外は全部断ってるってことだ。月菜にそんなに夢中とは、心底惚れているんだろうなぁ」
父の言葉には、宵への純粋な感嘆と、私への安堵が込められていた。
「うん……」
私は曖昧に答えたが、それはたしかに事実だろう。宵は私を「俺だけのもの」として徹底的に管理しようとする代わりに、自分についても「月菜を不安にさせないため」と称してオープンにする。
以前、宵は頼んでもないのにわざわざ私のスマホに「いつでも俺がどこにいるか分かるように」と、宵のGPSと繋がる位置情報共有アプリを入れようとしたことがある。流石にそれは断ったが、彼の愛情と執着が表裏一体であることを知らしめる出来事だった。
更に彼は自分のスマホの会話履歴を私に見せてくることがある。取引先や社員との真面目な内容ばかりで、女性とのやり取りなど微塵もない。それは安心材料ではあるけれど、同時に、代わりに私の方のスマホや行動も、細かくチェックされている。きっとそっちが本命の目的だろう。
さらに、昨日の彼の突然の帰宅が物語るように、彼は予定の合間を縫っては帰宅し、暇さえあれば私にまとわりついて来る。そして、気づくと私は、彼の大きな体に包み込まれて、いつの間にか、またあの濃密な時間の中にいるのだ。
電話を切ってリビングを見渡すと、いつの間にか宵が戻ってきていた。いつからそこにいたのだろう。彼は私に背を向けてキッチンに立ち、何かを温めている。
「おかえり。いつ帰ってきたの?」
「さっきだ。月菜が実家と話してる間、邪魔しないように待っていた」
私の会話が終わるのを、彼はただそこに立って待っていたというのだろうか。その事実に、私の背筋に冷たいものが走った。
彼はマグカップを二つ持って振り返る。その顔は、私が先ほど実家の両親に聞かされた通りの、完璧な愛と優しさに満ちていた。
「月菜、まだ冷えるから紅茶を淹れた。次は少し時間があるから、ソファでゆっくり読書でも……」
そう言いながら、宵は私の方へ歩み寄ってくる。彼の瞳の奥の深い闇は、私が次に彼に抱きしめられ、やがてソファからベッドへと運ばれる、未来の情景を既に描き出しているようだった。
◇◇◇
彼の私に対する執着は、私たちの私的な時間だけに留まらない。唯一の外界との接点である友人との予定も、宵の支配下にある。
「誰に会うんだ?」「何時に、どこのカフェで?」
まるで秘書かボディガードのように、彼は私の予定を細かく確認する。そして、友人との別れ際――帰りは必ず指定した時間通りに、指定した場所へ車で迎えに来るのだ。
中でも宵がいちばん嫌うのは、宵不在の場で、私が男と会うことだった。 それは付き合い始めた頃から一貫していて、例外はほとんどない。どうしても必要があるなら、必ず宵が同行する。それが、暗黙の、けれど絶対的な条件だった。
「……同窓会?」
宵が低く聞き返す。
「ええ。高校の。久しぶりだし、参加したいなって思って」
言いながら、私は内心で身構えていた。 反対されるだろう、と半ば諦めていたからだ。
「男もいるんだろうな。当然」
「まあ……そりゃね。女子校じゃなかったし」
宵はそれ以上何も言わず、黙り込んだ。 その沈黙が、いちばん怖い。
――やっぱり、だめよね。
そう諦めかけた、そのとき。
「……いいだろう」
一瞬、耳を疑った。
「ほんと?」
「ただし、条件がある」
「どんな……?」
「俺を同伴させろ」
「えっ……私の同窓会に?」
思わず声が裏返る。
「家族が同伴してもいいだろ。伴侶を連れてくるやつは、たまにいる」
理屈としては間違っていない。 けれど、妻の同伴は聞いたことがあっても、夫を連れてくる例は、正直あまり思い浮かばなかった。
少し迷った。でも―― どうしても参加したい気持ちの方が勝ってしまった。
「……分かった」
宵は、それ以上何も言わず、ただ満足そうに私を見た。
それから、同窓会の準備が始まった。 専業主婦で時間がある、という理由で、私は幹事を任されることになり、名簿や連絡先の管理に追われていた。
慣れない作業に四苦八苦していると、背後から宵の気配がする。
「何をしようとしてるんだ?」
「この名簿を整理しないといけなくて……」
「貸してみろ」
言われるがままパソコンを渡すと、宵は迷いのない手つきで操作を始めた。 数分も経たないうちに、煩雑だった作業はすっかり整理されてしまう。
「これでいいだろ」
「……ありがとう」
「ほら、もう遅いから寝るぞ」
「まだ二十時だけど……」
宵は私を見下ろして、意味ありげに微笑った。
「やることがあるだろう?」
「……もう……っ」
文句を言いかけた私の声は、宵の唇に遮られた。
――そして迎えた、同窓会当日。
会場に入った瞬間、宵に視線が集まるのが分かった。 夫という立場で参加していること、隠しようのない体格、落ち着いた佇まい。どうあっても人目を引いた。
「旦那さん?」「すごい人連れてきたね」
同級生たちが次々に声をかける。 宵はそれに、驚くほど自然に応じていた。受け答えは柔らかく、距離感も絶妙で、さすが若くして成功を収めた人物だと感じさせる。
けれど―― そんな間も、宵の片手は私を離さなかった。
指を絡めるように手を握られ、時折、太腿にまで伸びてくる。
「やめて……」
小声で言うと、宵は平然と答える。
「月菜が可愛いからだ」
「ラブラブですね〜」
好奇の目で茶化す同級生たち。
「月菜にはいつも参ってます。魅力的過ぎて」
「きゃーっ!」
「月菜、幸せ者ね」
笑い声が広がる中で、私はなんとなく、場を掌握されつつある感覚を覚えていた。 否定も、抵抗も、できないまま。
――ああ、こうやって。
同級生だけじゃない。 両親もこんなふうに、少しずつ丸め込まれていったのだ。
◇◇◇
そんな生活から少しでも息抜きをしたくて、珍しく昼過ぎに「近くの画廊を見てくる」と告げ、一人で出かけた。これは数少ない、宵の監視から逃れられる時間のはずだった。
私は賑やかな街角から少し外れた、静かな路地にある小さな画廊で、心ゆくまで絵画を鑑賞した。心に静けさが戻ってくるのを感じた。
しかし、その穏やかな時間は長く続かなかった。画廊を出て、私が最寄りの駅に向かって歩き始めたとき、聞き慣れた低い声が背後からした。
「月菜、迎えに来た」
振り返ると、やはり宵が立っていた。彼は仕事用の完璧なスーツ姿ではなく、カジュアルなジャケットを着ていた。まるで尾行していたかのように、そこに。
「ねえ……どうしてあなたがここにいるの?」
私の声は、警戒と動揺で震えた。
「私を監視してるの?」
宵は少し微笑んだ。その表情は優しく、しかしどこか底知れない。
「監視?まさか。月菜のことは何でもわかるだけだ。愛の力かもな?」
そんな詩的な言葉を信じるほど、さすがに私は単純じゃない。この異常なタイミングと距離感は、偶然ではありえない。何かしらの手段で、私は監視されている。宵ならやりかねない。
だが、彼にそれを止めさせるのは困難なように思える。
問い詰めても、彼は得意の甘い言葉で「愛ゆえだ」とはぐらかすだろう。もし私が決死の覚悟で証拠を突き止めたとしても、彼はその執着と力で、私の抵抗を押し切ってしまうに違いない。
そして、そんな思考を巡らせる暇など、宵は与えてくれないのだ。
彼は本当に、最近家にいる時間が増えている。以前は数日家を空けることもあったのに、今は一泊の出張さえ拒否している。 「仕事の仕組みを調整した」とか言っていたが、それは明らかに私と一緒にいる時間を確保するためだ。
「さあ、月菜。せっかく気分転換に出かけたんだ。次は俺と出かけよう」
宵はそう言うと、私の手を取った。抵抗しようとする私に、彼は屈託のない笑顔を向ける。
「たまには気分を変えて、ホテルにでも泊まらないか?久しぶりのデートだ」
「ホテル……?」
予想外の提案に、私の思考は一瞬止まった。彼はそのまま私を先導し車へと乗り込ませる。
車はあっという間に街の中心部を走り抜け、高級ホテルのエントランスに滑り込んだ。大理石のフロア、重厚な絨毯、そして私服の私たちを咎めることなく、恭しく頭を下げるホテルスタッフたち。
私たちが通されたのは、最上階のスイートルームだった。
「わあ……」
思わず声が漏れる。壁一面の窓からは、東京の街並みがパノラマで広がっていた。眼下に広がる夕暮れの景色は、煌びやかで、息をのむほど美しい。宵の邸宅も十分豪奢だが、ここは外界から切り離された、隠れ家のような特別感がある。
「気に入ったか?」
宵は満足そうに微笑み、私の肩を抱いた。
「月菜を飽きさせないよう、俺も気を付けないと」
「だから飽きたなんて言ってないってば……。でも、どうして急に?」
「もちろん、月菜が退屈しないように、だ。これからも長い結婚生活、月菜をもっと楽しませたい」
彼は私の腰に手を回すと、景色を背にして私を抱き寄せた。
「……月菜に逃げられないようにな」
反論の言葉は、熱い唇で遮られた。ねっとり絡んでくる、厚く長い舌。彼の大きな体に押し潰されるみたいになり、窓の外の美しい夕焼けが、歪んで視界に映る。
柔らかな絨毯、静寂に包まれた豪華な空間。私はあっという間に彼の引力に引きずり込まれ、抗うことをやめた。
思考は彼の熱に溶かされていき、意識は彼の支配へと沈んでいく。豪華なスイートルームは、あっという間に宵の愛の檻へと変貌した。
宵の執着には、もう慣れているつもりだった。 捕まることも、連れ戻されることも、今に始まったことではない。
それでも私は、まだ大丈夫だと、どこかで思っていた。 この程度なら、彼は許しているのだと。 ――その甘い考えが、彼をどれほど狂わせてしまうのか。 この時の私はまだ、分かっていなかった。